【事例紹介】高校2年生Sさんのケース
2025.05.18
【事例紹介】高校2年生Sさんのケース
相談受付日:2025年5月11日(火)
■ 背景と相談のきっかけ
ある火曜日の昼休み、事務所に1本の電話が入りました。
電話の主は高校2年生Sさんの母親で、「娘が昨日から学校に行きたくないと言い、家で寝ている。どうしたらよいかわからない」と不安な様子で相談されました。
Sさんは三姉妹の長女で、ご家庭は両親と3人姉妹の5人家族。
中学校時代はバレーボール部に所属し、高校では文化部に在籍。
もともと友達が少なく、高校1年の時に仲の良かった友人2人とクラスが分かれてからは、昼食もひとりで取ることが多くなったとのことでした。
■ 初期対応と聞き取りのポイント
1回目の相談では、できる限り多くの情報を得ることを意識しました。
母親自身が話すことで気持ちを整理できることもあるため、「話を聴くこと」と「情報を得ること」を両立する姿勢が重要です。
母親によると、
小・中学校時代から友人は少なく、人間関係づくりが苦手
勉強は平均よりやや上
姉妹関係も良好で、親子の関係にも問題は見られない
登校拒否は今回が初めてで、これまでは特に大きな問題なく通学していた
という状況でした。
■ 状況分析と対応の提案
Sさんの「学校に行きたくない」という訴えの背景には、日々の学校生活での孤立感や小さなストレスの積み重ねがあったと考えられます。
一気に心が折れるわけではなく、少しずつエネルギーを失っていく——そんな心の疲労が静かに進行していたのかもしれません。
母親には以下の対応を提案しました:
まずは担任に連絡を入れ、現状を「知らせる」こと
→「学校に何かされたのか」ではなく、「今こういう状態である」という事実を共有する視点が大切です。
→ 知らせることで、学校側も目を配ることができ、適切な対応につながります。
今後に向けて、担任・学校と連絡を取り合える関係性をつくっておくこと
→ 信頼関係があれば、母親も子どもも一人で抱え込まなくてすみます。
■ 経過とその後の様子
その後、母親とは数回にわたって電話相談を行い、Sさんの状態や学校の対応について継続的に情報を共有しました。
家庭と学校の間に信頼関係が生まれたこともあり、Sさんは大きく休むことなく徐々に回復。
学校生活にも少しずつ戻っていくことができました。
■ 学びとポイント
この事例から見える大切な視点は以下のとおりです:
子ども自身が相談窓口に来るとは限らない。親の思いをまずしっかり受け止めることが重要。
問題の背景には、孤独感や人間関係の変化が静かに影響している場合がある。
相談を受ける側は、「問題を解決する」よりも、「寄り添い、ともに考える」姿勢が信頼につながる。
学校と家庭が対立するのではなく、協力関係を築くことが、子どもの安心と回復への道になる。
