事例名:高校2年生Sさんの登校困難への初期対応と支援
相談・支援事例報告書
事例名:高校2年生Sさんの登校困難への初期対応と支援
報告日:2025年5月18日
相談受付日:2025年5月11日(火)
相談者:Sさんの母親
1.相談の概要
2025年5月11日(火)の午後、事務所に1本の電話相談があった。
相談者は高校2年生Sさんの母親であり、
「娘が前日から『学校に行かない』と言って登校を拒否している。
今後どうすればよいか分からず困っている」との申し出であった。
2.家庭・本人の状況
- 家族構成:両親と3人姉妹(Sさんは長女)
- 性格傾向:もともと友人は少なく、人間関係づくりが苦手
- 学力:中程度よりやや上
- 姉妹関係・親子関係:いずれも良好
- 学校生活:高校1年時に親しかった友人とクラスが分かれ、
現在は昼食をひとりで取ることが多い
- 所属:中学校ではバレーボール部、高校では文化部に所属
- 現状:自室で寝て過ごしているが、体調不良ではなく、
意思的な登校回避と思われる
3.支援の経過
(1)初回対応
まずは母親の話を丁寧に聞き取り、
情報収集と同時に心理的支援を行った。
相談者は混乱や不安を抱えていたが、
話すことで徐々に落ち着きを取り戻していった。
(2)助言内容
母親には、次のような対応を提案した:
- 学校への連絡:担任に現状を伝えることで、学校としても配慮や支援が可能になる。
→「何が原因か」よりも「今どういう状態か」を共有する姿勢を持つことが重要。
- 学校との関係性構築:今後の見通しが立たない中でも、
担任との連絡が可能な関係をつくっておくことが、長期的な支えになる。
また、Sさんの様子に急な変化は見られず、
日常的な疲弊や孤独感の積み重ねが背景にある可能性を母親に伝えた。
4.支援の結果と経過
相談後、母親は担任に連絡を入れ、
学校もSさんの状態を理解する方向で対応。
その後、母親とは複数回の電話相談を継続的に実施。
Sさんの様子は徐々に安定し、
大きな欠席には至らず、登校も再開していった。
特に無理に登校を促すことなく、
家庭内での安心感を維持することが効果的であった。
5.考察と課題
この事例からは、以下のような支援上のポイントが導かれる:
- 保護者の初期対応が、支援の質を大きく左右する:
母親が早期に相談したことで、事態が深刻化する前に対応できた。
- 「原因追及」よりも「状況の共有」が重要:
学校に対し、非対立的・協働的な姿勢で連絡することで、
支援体制が整いやすくなる。
- 孤独感への配慮:
本人の内面にある「独りでいる感覚」に寄り添い、
安心感を回復させる支援が必要である。
- 家庭と学校の連携の重要性:思春期の子どもに対しては、
学校側との信頼関係構築が中核となる。
6.今後の展望
母親からは引き続き状況を見守りながら、
必要に応じて連絡を取り合うことへの理解が得られている。
今後も、本人の意思やペースを尊重しつつ、
学校との連携を通じて柔軟な支援を継続する予定である。