T君との出会い

不登校児童を担任した経験談
私は小学6年生のT君と担任として出会うことになった
当時、T君は不登校の傾向があり、学校に通うことに困難を感じていた
彼は朝なかなか起きることができず、夜遅くまで起きている生活リズムが続いていた
振り返ってみると、朝起きることができなかったのは、
単なる生活習慣の問題だけでなく、
精神的なものが影響していたのではないかと思う

T君の家庭環境もまた、彼の不登校傾向に影響を与えていたように感じる
母親は精神的に不安定で、家庭内でもその影響が現れていた
父親は公務員として働いていたが、家庭内での子どもたちへの関心は薄く、
特にT君との対話もほとんどなかったと記憶している
T君には成人した姉がいたが、すでに家を出て自立していたため、
家族の中での支えは限られていた

T君の母親は、夫である父親の意向に従うことが多く、
家庭内で自分の意思を積極的に示すことはなかった
身なりにもあまり気を遣わず、時には娘のお下がりの服を着ることもあった
しかし、その服は年齢にそぐわないものが多く、
彼女の精神状態を物語っているように見えた
母親が家庭内で子どもに対して何らかの意見を述べたり、
指導するような姿はあまり見られなかった

そうした家庭の状況を背景に、私はT君の担任として関わることになった
T君は遅刻や欠席が続き、その対応は主に家庭訪問を中心としたものとなった
朝、出勤前にT君の様子を確認しに行くことが日課となったが、
彼が寝ていることも少なくなかった

母親には子どもを指導する力がなく、頼ることはできなかった
父親はすでに出勤しており、家庭内での教育力は非常に低い状況だった

T君が学校に来ない場合、午前中の空いた時間を利用して彼の家を訪問することが増えた
学校から家までは約10分の距離であったため、
比較的頻繁に訪れることができたが、
訪問しても鍵がかかっていて家に入れないことも少なくなかった
それでも、できる限りT君とのコミュニケーションを図ろうと努めた

T君は学校で問題行動を起こすこともあり、
放課後に話し合うことも多かった
また、家庭訪問を重ねる中で、
彼の心情や家庭環境を少しでも理解しようとした
しかし、最終的には約40日の欠席と遅刻を重ね、T君は卒業していった
不登校傾向が完全に改善されることはなく、
その点については非常に残念に思っている

T君の家には、何日通ったのだろうか
数えきれないほどの訪問を通じて、彼とのつながりを築こうとしたが、
果たしてどれほどの信頼関係を構築できたのかは定かではない
ただ一つ確かなことは、私は本気でT君に関わっていたということだ
当時の私にとって、それは教師としての使命感であり、
今も変わらぬ信念である

実は、少し前に大人になったT君に再会する機会があった
彼は大人になったものの、どこかあの頃の面影を残していた
その顔を見たとき、過去に彼と過ごした時間が蘇り、
あの時の自分の努力が少しでも彼にとって意味のあるものだったのか、
考えずにはいられなかった

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