不思議な彼女の物語

彼女と初めて出会ったのは、私が小学校6年生の担任を務めた年のことだ
その存在感は、一目で「不思議な子」という印象を与えるものだった

時間の感覚が曖昧で遅刻が多く、
毎朝「今日は学校に来るのだろうか?」と気を揉む日々。
時には、授業の合間を縫って彼女を迎えに行くこともあった
家でパジャマ姿のままの彼女を見つけ、調子の良い日はそのまま一緒に
学校へ向かうことも珍しくなかった

彼女の興味の中心は、当時「将来ユーチューバーになりたい」という夢だった
好きなユーチューバーの話を嬉々として語る姿は、
無邪気さと独特の感性を感じさせた

勉強については特に問題なく、理解力は十分
むしろ、彼女にとっての課題は「社会で生きる力」、
つまり社会性の育成だった

周囲との関わりと家庭環境

学校生活では、他学年の女子が彼女を手助けする場面がよく見られた
一方で、親しい友人との関係ではトラブルになることもあり、
その付き合い方の難しさを垣間見ることがあったあ

家庭環境についても一筋縄ではいかない
両親ともに特有の課題を抱えながらも仕事を持ち、
自立して生活していたが、時には祖母の助けを借りることがあった
例えば、学校での集金が遅れるといった場面にも、
家庭環境の影響が現れていた

文部科学省の2022年度調査によると、
公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒の約8.8%が
発達障害の可能性を抱えているとされている
しかし、彼女の場合、6年生になるまで特別支援を行ったり
発達障害の検査が行ったりすることはなかった
特別支援学級対象児としての名前にすら
挙がっていなかったのは驚きですらある

学習面や行動面で顕著な困難を示す可能性があったにもかかわらず、
適切な対応がされなかったことは、
将来の進路や生活に影響を及ぼす可能性があった

彼女の疑問と世界観

「なぜ学校に通わなければならないのか」
「どうして掃除をする必要があるのか」
彼女が真顔で発する問いには、彼女の世界観が凝縮されているようである
これらの疑問は、大人にとって当たり前に感じられる
ルールや慣習への素朴で鋭い視点を示していた
それは同時に、彼女が抱える内面の葛藤や、
自分自身と外界との違和感の表れでもあった

未来を見据えた支援の必要性

私は彼女が卒業後も安心して中学校生活を送れるよう、
適切な支援を繋ぐことを目標にした
中学校へ引き継ぐ際には、できる限り詳細な申し送りを行い、
必要であれば専門的な検査を受けられるよう環境を整えることを考えた
もし発達障害があったとしても、
それを正しく理解し、適切な支援を行うことで、
彼女の未来の可能性を広げることができるはずだ

母親との話し合いの中では、
家庭内でも彼女への理解が深まっている一方で、
「受け入れたくない」という微妙な感情が見え隠れしていた
母親自身が孤立感を抱えながら悩む様子も伺えた
就学前の段階で保健師や保育園などの支援機関と連携し、
早期に対応していれば、よりスムーズな環境作りが
可能だったかもしれないと考える

教師としての信念

私は、彼女の「不思議さ」をただの特徴として捉えるのではなく、
彼女の特質を深く理解し、得意なことを伸ばしながら
苦手なことを克服していくための支援が必要だと考えていた
彼女の持つ疑問や探究心を尊重しながら、
具体的な指導を構築すること
それが彼女の未来を支える最善の道だと信じている

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